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「大丈夫だよ」と自分に言えるようになるために─セルフコンパッションで心を整える

コラム

私達は普段、誰よりも近くで自分の心の声を聞き続けています。嬉しいときも、悲しいときも、焦るときも─いちばん身近で耳にするのは、自分の言葉です。しかし、その言葉がいつも優しいとは限りません。「もっと頑張らなきゃ」「どうしてこんなこともできないの」「また失敗してしまった」……気がつくと、自分を励ますどころか、誰よりも厳しく責めてしまうことがあります。

そんなときに大切なのが、セルフコンパッション=自分への思いやりという考え方です。これは心理学者クリスティン・ネフによって提唱され、海外でも日本でも「折れにくい心」を育てる方法として研究が進められています。ここでは、自分に優しくできるようになるためのヒントを、やわらかく、そして少し専門的にお伝えしたいと思います。

自分を責める心の背景にあるもの

私達が自分を厳しく責めてしまう背景には、「失敗してはいけない」という思い込みや、人から嫌われないための防衛、成長には厳しさが必要だという信念があります。日本では「自分に厳しくあること」が美徳とされやすく、「そんな自分でも大丈夫」と言うのが難しい人も少なくありません。

そして実は、自分を責めることもまた、自分を守ろうとする方法のひとつです。先に自分を叱ることで、傷つく痛みをやわらげようとしてきたのかもしれません。心理学ではこれを「防衛的自己批判」と呼ぶことがあります。

だからこそ、自分に優しくできない自分を、さらに責める必要はありません。その厳しさの奥には、「傷つきたくなかった」という思いが隠れていることが多いのです。

「自分に優しくする」とは甘やかしではありません

研究では、自己批判が強いほど不安や抑うつが高まりやすい一方で、自分に思いやりを向けられる人ほど回復力が高いことが示されています。

「自分に優しくしたら怠けてしまうのでは?」と感じる方もいます。しかし、実際には自分を責め続けるよりも、受け止めたうえで励ましたほうが、結果的に前に進みやすいのです。

自分を守るために身につけた厳しさを否定する必要はありません。ただ、その方法が今の自分に合っているかを見つめ直すことはできます。厳しさではなく、やさしさという新しい方法で自分を支えることもできるのです。

セルフコンパッションとは何か──やさしさの3つの柱

セルフコンパッションは「自分への優しさ」「共通の人間性」「マインドフルネス」という3つの要素から成り立ちます。

自分への優しさとは、失敗した自分を叱るのではなく、友人に接するように声をかける姿勢です。

共通の人間性とは、失敗や弱さは誰にでもあると理解し、自分だけが劣っているわけではないと思い出すことです。

マインドフルネスは、感情を押し込めたり飲み込まれたりせず、今の気持ちをそのまま感じる力です。

この3つが揃うことで、自分に優しく、現実とも向き合えるしなやかな心が育ちます。

自分を受け入れられると、心は静かに強くなる

ここからは、日常の中でできるセルフコンパッションの簡単な練習を紹介します。

まずは手を胸に当てて、ゆっくりと深呼吸をしてみてください。この動作は身体を通して心に触れる方法で、副交感神経が働きやすくなり、自然と不安が落ち着いていきます。

次に、いまの自分の感情を「落ち込んでいる」「不安がある」「疲れている」など、言葉にしてみます。評価もジャッジも必要ありません。ただそう感じている自分を認めるだけで十分です。

最後に、自分に対して優しい言葉をそっと置いてみます。「つらかったね」「よく頑張っているよ」「大丈夫、ひとりじゃないよ」「今はうまくいかなくてもいいんだよ」など、あなたが心の奥で本当にほっとする言葉を選んでみてください。

「大丈夫だよ」と言える心を育てる練習

セルフコンパッションを続けていくと、自分への目線が少しずつ変化していきます。ダメなところばかりを探していた視線が「できている部分」や「小さな成長」にも向くようになり、失敗は自分の価値の否定ではなく、人生の学びや経験の一部だと感じられるようになります。

また、他人の言葉や視線に過敏に揺れにくくなるため、心にしっかりとした軸が生まれていきます。やわらかい優しさの中に、静かだけれど確かな強さが育っていくのです。

「大丈夫だよ」と自分に言えるようになるために

自分に優しくすることは、自分を甘やかすことではなく、自分を守る新しい方法を選ぶことです。これまで厳しさで守ってきた自分に、「もう少しやわらかい方法でもいいよ」と伝えることでもあります。その小さな選択が、心をゆっくりと整えていきます。

もし、自分を責める声が強くて苦しいときや、やさしい言葉を自分に向けるのが難しいときは、ひとりで抱え込まずに、誰かと一緒にその声を見つめてみるのもひとつの方法です。カウンセリングでは、あなたが自分にやさしくなれる力を一緒に育てていきます。どうぞお気軽にご相談ください。

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